クロス・マインド
地図を眺めていると
奥さんがサンドイッチと
紅茶を持ってきてくれた。
「しかし…良かったねぇ…やっと独り立ちさせて
もらえたなんて。」

ここの夫婦には
今まで、厳しい親のせいで
家から出ることが許されず。
当然、自分の街からも
出たことがない為、
やっと自由になった今
街を見て廻っているのだと
説明した。



間違っても、砂嵐の壁を
越えてきた…なんて言えない。

一般人には
大概は『頭が可笑しいのでは?』
と、思われるだけだが
下手すると侵略者扱いされる。

まだ、何も見てないのに
捕まるなんて
真っ平ごめんだ。

「でも、もう廃墟や砂漠の方へ
行くなんてするんじゃないよ?
ご両親が知ったら、
連れて帰られるかもしれないしね。」

奥さんが凄く心配そうに
言ってくれた。
宿に来る直前は
あの辺を散策してたとも
言ったから。
明らかに、そんな格好だったし…

「ありがと…そうするよ。」

そんな話をしていると
他の席から注文が入る。
奥さんはゆっくりしてねと、
言い残して行った。
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