クロス・マインド
鳴き声は酒場の横から
聞こえてくる。
細い路地を進んでいくと



『ガルゥ』



影が見えてくる。
犬…にしては大きい。

「…誰だい?」

襲ってくる気配がないので
近寄ってみる。

「……狼?」

微かな光で伺える
青緑のふさふさの毛が
夜風に揺れている。
何だか元気が無さそうだが…

「大丈夫?…
怪我でもしてるのか?」

側に寄り、手を伸ばすと
狼は顔を近づけ頬擦りしてきた。

「ふふ…くすぐったい。」
オレは撫でながら
傷がないか調べる。

「怪我は無さそうだけど…
もしかして…?」



ーーーグルルルルーーー



お腹の音が響く。

「そうか…ちょっと待ってな。
何か食べ物持ってきてやるよ。」

オレは立ち上がって
酒場の入り口に向かう。
扉の前には二人の男がいた。

「あぁ…良かった。
何かあったかと心配したよ。」

一人はキールだった。
もう一人は…










「耳……ふわふわ尻尾…」












オレはときめいていた。
(後日、キール談)
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