クロス・マインド
彼女が目を覚ましたと
知らせがきたのは
暫くしてからだった。



望遠鏡で様子を伺うと
ローブを捲り、自分の腕を
見ているようだ。

「あれは…」

彼女の左腕に、印の様なものが
見受けられる。
淡く光っているようだ。
彼女は苦痛の表情だった。
その後、廃墟の方を
望遠鏡で覗き
地図とコンパスを出す。

困った表情をしていたかと思うと
今度はニヤついてるのか?背伸びを始め、深呼吸をする。
何やら話している様だが
この距離では声は拾えない。

廃墟の方に歩き始め
拳を突き上げていた。

「セルフィーニ王。
捕らえた方が良いのでは?」

「今はよい。」

「しかしっ」

「黙っていろ。」

「……はっ。」

私は望遠鏡を覗き込んだまま
兵士と話をした。
目が離せなかった…

彼女は急に立ち止まる。
振り向き、砂嵐の壁を
見ているようだ。

「泣いている?」

「何か?」

「いや…何でもない…」

私は頬を伝う光を
見落とさなかった。

彼女は涙を拭い、再び歩き出した。

「引き続き、監視を頼むよ。
少しでも変化があったら
至急教えるように。」

私は望遠鏡から目を離すと
台を降りることにした。
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