!戦いで人は成長する!
『まさかっ!』
心臓が張り裂けそうなほどの鼓動を感じながら墓地に目をやった。
かなり田舎だったので街灯がなく、真っ暗な墓地から慌ただしい複数の足音だけが耳に届いた。
僕は墓場を守るようにある柵を数秒で越え、足音を頼りに近付いていった。

結構目が慣れてきて辺りが見えるようになった。
周りを見回そうと立ち止まった時、
『おとなしくしやがれ!』
『早くしろよ!』
『分かっとるから待てや!』
と、オッサン二人の話し声が横の大木の裏から聞こえてきた。
僕は急いで大木の裏に回った。
すると、そこには一人のオッサンに両手をつかまれて抵抗しようとしているSがおり、それを見ているもう一人のオッサンが突っ立っていた。
『S!大丈夫か!』
Sに声を掛け、オッサン達を睨んだ。
僕は両手をつかんでいた一人のオッサンの両腕を蹴り上げ、
『お前ら、こんな事しやがって!許さん!』
いつもの怒りではなく、初めて味わう感覚が込み上げてきた。
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