めがね
わたしはいつしか
彼の事が好きになっていた。
濱口 威哉(はまぐち としや)
剣道部で、坊主頭、たれ目で黒渕眼鏡をかけている。
とても良い声なのだ。
なんで好きになったのかは覚えていない
でも、理由ではなく好きという事実が大事なのだとわたしは思う。

わたしは美術部に入った。
美術部にいた柿本先生が退職してから、森先生という人が来ると聞いていた
美奈と一緒に部室にいったが、誰もいなかった。
仕方がないので、イラストを少しかいて、帰ることにした。
美術室の鍵を閉めようとして、ぐるりと鍵穴を回そうとすると、
グネン と、嫌な感覚が手に伝わった。
鍵が曲がってしまっていた。
しかたなく、森先生に正直に話しに行ったところ、なぜ曲がったのか、何をしていたのか、
何を描いていたのか、しつこく質問された。
わたしはそのとき、森先生への心の扉をかたく閉じた。
「アナタキライ」と心が音をたて、しまっていった気がする。
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