狂おしい程君を愛してるー月下美人ー



ほかのお客の前では
喋らない人形。


佐藤さんの前では
喋る人間。



佐藤さんと居る時間は好きだった。



今日もご飯を食べながら
他愛ない会話をする。



「彩ちゃん、最近変わったねぇ」


「何が?」


自分でも変わったのは知っていた。
ー澪音の存在ー



「なんか、前より明るくなったし、
よく食べるようになった」

と笑う佐藤さん。

確かに前はストレスで
食べても吐いたり、
ほんの少ししか食べられなかったりしていた。



「彩、太った?」


「違う違う、健康的になった。
前は折れそうやったから。
心配してたんやで?」


「最近食べれるようになった」


「痣もなくなったし、安心したわ」


母親に会うことも、SMごっこをすることもなくなったから
あたしの身体の傷は、
消えない火傷の痕と
リスカ痕だけになった。



「ありがとう、佐藤さんは優しいね」


「私は彩ちゃんのこと、大切に思ってるからね。

彼氏でもできた?」



ー彼氏。
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