運命~誰がために~
一幕
淡い月明りの中。一人の男が京の街を歩く。

遊んでいるわけではない。これも彼の仕事の内だ。


「……ん?」



見ると普段は静かな夜の街に人だかりが出来ている。


(面倒事じゃなきゃいいが……)



世間では『危きには近付かず』なんて言葉があるが、そんなものは彼にとって関係のない言葉だ。

むしろ危きに自ら近付く、それが彼の仕事と言えよう。


彼は人込みを押し退けて中心へと歩を進める。
それに気付いた町人が彼に声を掛ける。


「調度良かった。お侍様。あんた新選組の人だよね?」
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