平安なあいつ、

「……やだっ。
なんなのこの飲み物は。
人間の食して良いものじゃありませんわ!!」

執事風味の男性に注文を任せ、
女性は出てきたコーヒーを口に運んだところだった。
美しいカップを上品に持ち、
形の良い唇に運んでいるのに見惚れていると、
予想だにしなかった感想が述べられ、
お嬢様はコーヒーを飲まない生き物だったのかと一瞬納得しかけたが、
やっぱりそうじゃない、この人が変わっているんだと思い直した。



「…私にお話、とは?」


今だに苦々しい顔でコーヒーを見つめる彼女に話し掛けた。


「ああ、ごめんなさい!

……えっと、単刀直入に言いますね」

ひとつ息を吸って、

「私とあなたの人生を取りかえませんか」

にんまりと私を見つめる




















……意味が、分からない。


あんな惨めな光景を目の当たりにして、こんな不細工を捕まえて。

私の人生なんて希望がない、
でもこの人は希望に溢れてるじゃないか。

わざわざ不幸になりたいって言うの?

そんなはずない。

不幸になりたい人なんているはずない、皆誰しも幸せになりたがっている。


それよりなにより。
取り替えるってどうやって
それ以上説明する気がないのか、またコーヒーを少し飲んでは顔をしかめている。


やっぱり、バカにするために呼んだんだ。

嘲笑うためだけに、こんなことまでするんだ。

なんてことだ。

やっぱりあの時さっさと帰ればよかったのに。
< 3 / 8 >

この作品をシェア

pagetop