平安なあいつ、
「……やだっ。
なんなのこの飲み物は。
人間の食して良いものじゃありませんわ!!」
執事風味の男性に注文を任せ、
女性は出てきたコーヒーを口に運んだところだった。
美しいカップを上品に持ち、
形の良い唇に運んでいるのに見惚れていると、
予想だにしなかった感想が述べられ、
お嬢様はコーヒーを飲まない生き物だったのかと一瞬納得しかけたが、
やっぱりそうじゃない、この人が変わっているんだと思い直した。
「…私にお話、とは?」
今だに苦々しい顔でコーヒーを見つめる彼女に話し掛けた。
「ああ、ごめんなさい!
……えっと、単刀直入に言いますね」
ひとつ息を吸って、
「私とあなたの人生を取りかえませんか」
にんまりと私を見つめる
……意味が、分からない。
あんな惨めな光景を目の当たりにして、こんな不細工を捕まえて。
私の人生なんて希望がない、
でもこの人は希望に溢れてるじゃないか。
わざわざ不幸になりたいって言うの?
そんなはずない。
不幸になりたい人なんているはずない、皆誰しも幸せになりたがっている。
それよりなにより。
取り替えるってどうやって
それ以上説明する気がないのか、またコーヒーを少し飲んでは顔をしかめている。
やっぱり、バカにするために呼んだんだ。
嘲笑うためだけに、こんなことまでするんだ。
なんてことだ。
やっぱりあの時さっさと帰ればよかったのに。