気まぐれ社長の犬
「…そうだね。でも妃和ちゃんの親はきっと何も言わないよ。婚約さえすればね」
「は?なんだよそれ。自分の娘が危ない目にあうかもしれないんだぞ!?心配じゃないのかよ」
「あの子の親は、あの子に政略結婚をして欲しいんだよ。大きな会社の社長と結婚すれば自分の会社との繋がりができる。あの子は、そのためだけに育てられてきたようなもんなんだ」
「は…?そんなのありかよ……あいつはずっと利用され続けて、そのために育てられたなんて……そんなの親じゃねえだろ!!」
「世の中にはそんな親もいるんだよ。だから妃和ちゃんは小さいころから勉強も礼儀作法も厳しく教育されてきたんだ」
「ふーん……」
「だからあっちの親もすぐに了承してくれたよ」
「なんだそれ……」
タオルを掴む手にギュッと力を込めた時、静かに扉が開いた。
「あの……」
「あっ妃和ちゃん。響城も早く風呂入ってきたら?」
「ああ」
俺は部屋を出てシャワーを浴びにバスルームに向かった。
服を脱ぎ蛇口をひねると熱いお湯が俺の体を濡らす。
あいつの父親、なんとなく覚えてる。
娘を着飾らせて、見せびらかしてるようなかんじで…でもあいつのことを大切になんか思ってなかった。
最低だろ……
子どもは自分の道具じゃねえんだよ!!
って…俺何考えてんだよ。
あいつのことなんて関係ないし考えたって仕方ねえだろ。
キュッと蛇口を締め、俺はバスルームを出た。