気まぐれ社長の犬
その顔は、何か言いたげで…だけど響城さんは口を開こうとはしなかった。
「なーんて、ちょっと恐かったですか?」
私は悲しげに微笑んだ。
「いや、お前は正しいよ。それにいつでも妃和は恐いだろ」
響城さんは柔らかに微笑み私の頭を撫でた。
「じゃあ終わりにするか」
団長に近づきナイフを抜いて、戦いの終止符を打つ。
「今回の契約は無しだ。お前らにも死者は出してないつもりだがもう殺し屋はできないはず。真面目にサーカス団を続けるんだな」
「ぐっ…」
「分かったな?」
足の傷を踏みつけて睨み付ける響城さん。
まさに鬼だ。
私より恐いんじゃないかと思う。
「ひっは、はい!」
「なら良い。妃和、帰るぞ」
「はい」
私はまだ倒れている心ちゃんに歩みよった。