気まぐれ社長の犬
響城さんを見上げると視線が絡まる。
「な?」
そう言って向けた笑顔に胸が高鳴った。
「はい!」
この時、麗美さんの表情がひどく歪んでいたのを、私は視界の端で捉えていた。
「…あっそ。でもあたし、諦めないから。絶対あんたに勝って響城を取り戻す」
私を睨み付け、麗美さんは踵を返す。
「行くわよ一條」
「はい」
そう短く返事をして頭を下げた男。
今まで全く気づかなかった男の存在に私は驚く。
こんな人…さっきからいた?
口を開いて初めて存在を認識できた男。
一條と呼ばれたそいつは独特の不思議な雰囲気が漂っていて、一目見ただけで危ないやつだと私の中の警鐘が響いた。
どっちかと言うと私と同じタイプの人間だ…
従順で、強くて…全てを主人に捧げる覚悟のある1番敵にすると厄介なやつ。