気まぐれ社長の犬
自分の部屋の扉をあけると、そこにはいるはずのない妃和が立っていた。
「うわっ妃和?何でいんだよ」
「勝手に入ってすみません。あの…聞きたいことがあるんです」
「なに?」
「あの…あたしここにいて、本当にいいんですか?」
「何だよいまさら。最初はあんなに強気だったくせに」
「だって嫌なんでしょ?それに…同情なら止めてください」
「…聞いてたのか」
妃和は苦しそうにうつむいた。
「別に同情じゃねえよ。最近敵が多くて疲れてたんだ。だからちょうどいい」
「響城さん……ありがとうございます」
「別に」
こいつにとっても家に帰すよりここにいた方が楽だろ。
「じゃあ今日より私はあなたの婚約者兼ボディーガードということで…契約成立ですね」
そう言って妃和は俺に軽くキスをした。
「お返しです。では失礼します」
そう言って妃和は意地悪く笑って出ていった。
なんだよ……さっきまで悲しそうな顔してたくせに。
つか俺なんでこんなドキドキしてんだよ!!
この前は何も思わなかったのに、キスぐらいでバカみてぇ。
まぁきっとあいつの顔だ。
あんな綺麗な顔であんな笑顔見せられたから……だよな?
……あーもう寝よ!!
俺は気持ちを抑えるように目を閉じた。
芽生え始めた、自分の気持ちに気付かないように―――