気まぐれ社長の犬
お酒は人を変えるのではなく素直にさせるのです
1日の仕事が終わり車で帰っている時だった。
「お前傷は完治したのか?」
「ええ、もうすっかり。傷も塞がって、抜糸も済みましたから」
あれからだいぶ経った今は傷が残っている程度で、もう開くこともなさそうなぐらい治っていた。
傷はまだ残っているけど私は傷跡が残らないから問題はない。
「そっかー明日は珍しく1日仕事休みだし、酒でも飲むか?」
「あら、珍しいですね?響城さんが私を誘うなんて」
私は結構強くて、普通に飲んでて酔っ払うことはまずない。
昔からパーティーに呼ばれることが多かったし酔っ払ってしまえば何をされるか分からないからね。
「最近忙しかったからな。お前と飲んだことなかったし、この前取引先の社長に良いワインもらったんだよ。それ開けようと思ってな」
「ワインですか。いいですね。でもそれ1本じゃ足りなそうですから、他にも何か買って行きませんか」
響城さんが驚いた顔で私を見る。
「お前強いのか?」
「ええ、実は結構」
「ふーん、俺も酔っ払ったことないんだよな。俺の周りあんまり強くなくてさ。今日はどっちが先に潰れるか、勝負だな」
酔っ払った響城さん…みたいかも。
可愛らしい響城さんを想像して、頬が緩む。
「いいですね。負けませんよ?」
「楽しみだ。酔ったらお前、どうなるんだろうな」
「さあ…分かりませんが、響城さんを襲ってしまうかもしれませんね?」
そう言って笑うと、響城さんは私の顔の隣に手をついて顔を近づけてきた。
キスできるぐらいの距離まで近づいて響城さんは動きを止める。
「それまで俺が我慢できたらな」
そのまま軽くキスをして響城さんは私から離れた。
突然のことだったから、鼓動が少し早くなる。
平然と隣で座っている響城さんを横目で見ながら、恥ずかしさで少し私は俯いた。