気まぐれ社長の犬
目の前に並べられた日本酒、ワイン、ウィスキーの数々。
「こんなに買い込むことはなかった気がしますが…」
「あそこいいの揃ってんだよ。久しぶりに見たら色々飲みたくなった」
響城さんは楽しそうにワインを開ける。
ラベルを見ると、この中で飛び抜けて高いものだった。
「これがもらったやつですか?」
「ああ。300万はくだらないってよ」
注いだグラスを私に渡して「乾杯」とグラスを傾けた。
1口含むと、確かに高いだけあって香りも味も素晴らしかった。
「うん、美味しい」
「ええ。これなら1本すぐに空けてしまえそうですね」
「他にも色々あるからじゃんじゃん飲め。そして酔え」
空いた私のグラスにワインを注ぎながら言うから、私もそのまま瓶を取り上げて響城さんのグラスに注ぐ。
「響城さんも酔ってください」
注いだばかりのワインはすぐになくなり、グラスをこちらに向ける響城さんは得意そうに笑った。
「ほら、ついて来いよ」
「…臨むところです」
私は響城さんにワインを注ぎ、自分も飲み干した。
やっぱりこれ美味しいな…
グラスごしに赤い液体を眺めながら思いつつ、響城さんにまたそれを注いだ。