気まぐれ社長の犬
「どうなんだろうね…でも全部、だよ。僕は君の主治医として、親友の彼氏として、そして君の先輩として…心配なんだ。紅(べに)にも無茶させるなって言われてるしね」
「そう、ですか…」
馬鹿だな私は…
こんなことを聞いて、どんな答えを待っていたんだろう。
「じゃあもう帰りますね」
私が立ち上がろうとすると、先輩は私を呼び止める。
「眼鏡はちゃんとつけてるのかい?」
「あ…たまには」
そういえば忘れてた。
仕事上集中力と視力を必要とするから、視力を人並みにするあの眼鏡はあまりつける時がない。
まあ先輩には毎日着けろってうるさく言われてるんだけどね。
「妃和ちゃん、毎日着けなさいって言ってるでしょ?脳にこれ以上負担をかけないでくれ。集中して目を使うのは1日2時間まで、わかった?他は眼鏡をかけること」
「はーい。気をつけまーす」
「はあ…本当にわかってるんだか…あと、頼むからこの前みたいに担ぎ込まれるようなことは止めてよ。腹を撃たれたって聞いて本当心臓が止まるかと思ったんだから」
「そういえばここの病院でしたね。すみません。もうあんな事しませんから、安心してください」
小さく頭を下げると呆れたように先輩は笑った。