気まぐれ社長の犬
咲本さんはショップの前に車を止めると紳士ぶって助手席の扉を開けて手を差し出す。
「ありがとうございます」
満足した表情の咲本さんに顔が引きつるのを抑えて、私たちはお店の中に入った。
「何がいいんでしょうか?男性の意見を聞かせてください」
「そうですねーネクタイや財布なんかはどうでしょう?」
確かにいいかもしれない。
でも私にそれをもらって
喜ぶだろうか?
できればなくなる物がいい。
私の存在なんて
忘れられるように。
でも花はあの家にはたくさんあるし響城さんからすれば邪魔なだけだろう。
「妃和さんどうしたんですか?」
「あっいえ…ネクタイにしようかな」
「そうですか。ならこれなんかいいんじゃないですか?」
咲本さんは暗い青のネクタイを私に見せた。
確かにデザインも悪くない。
「そうですね…じゃあそれにします」
私はレジに行く途中、ある物を見つけた。
あっそうだこれも買おう。
私はその2つをレジにだし別々に包装してもらった。
「お待たせしました」
「いえいえ。今からお茶でもしませんか?」
「すみませんまだ仕事が残っているので……」
なんて嘘だけど。
私がしなきゃいけない仕事は全て終わらせた。
じゃなきゃ買い物に
なんか来ないわ。