気まぐれ社長の犬

「少しぐらい大丈夫ですよ。行きましょう?」


「すみません…今日中に終わらせたいので」


「そうですか…残念です。ではまた次の機会に。送りますから乗ってください」


「すみませんありがとうございます」



会社の前まで送ってもらって、別れる時にさっき買った袋の中から小さい方の包みを取り出した。



「あの、これ今日のお礼です。
たいした物ではありませんがもらってください」


「いいんですか!?」


「もちろんです」



咲本さんは嬉しそうにそれを受け取る。

中身はさっきレジに行く途中見つけたネクタイピンだ。


響城さんがネクタイで咲本さんはネクタイピン…一応差をつけてみたつもりだけどきっとこのバカは嬉しくて気付かないだろうな。



「じゃあまた」


「はい」



私は満面の笑みを私に向ける咲本さんに手を振って会社の中に入っていく。


なんて単純で面倒くさいやつなんだろう……


副社長室に入るとちょうど響城さんの仕事が終わったところだった。



「お前どこ行ってたの?」


「暇だったのでちょっと買い物に行ってました」


「ふーん。じゃあ仕事も終わったし帰るぞ」



家に帰って自分の部屋に入るとクローゼットを開けた。

そこにはお母様からいただいたドレスがいくつも並んでいる。


明日はどれを着ようかな。

最後だから暗い色にしたいけど、社長就任パーティーだからなー…。

んーやっぱり黒にしよう。
でもあまり重くならないよう短いカジュアルめなやつを選んでクローゼットから出した。

靴とバックも選んで置く。



「よし……プレゼントは、家を出る時に響城さんの部屋に置いておけばいいや」



後は、あんまりないけど荷物片付けなきゃな。



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