気まぐれ社長の犬

その夜、私が寝ていると部屋の扉がゆっくり開いた。


やっぱり来たか……


中に入ってきたそれは音をたてず私の隣まで歩いて来る。

そしてナイフを私に向かって振り下ろした。



「そこ、ずれてますよ?」



私は振り下ろされた手を掴んだまま目を開けた。



「やっぱりあなたは甘いというか…優しいですね。響城さん」



響城さんは驚いたように私を見て、掴んだ手を振り払った。



「何で気づいた?」


「今日来ると思ったからですよ。あの時の響城さん、本当に嫌そうでしたからね。枕にでも刺しておいて脅そうと思ったのでしょう?」


「ああ。この家から出ていけ」


「すみませんがそれは無理です。もう私に帰る場所なんてありませんから」


「は?何でだよ」


「さあ?なぜでしょうね。それより、もう決まったことなんですから私を利用すればよろしいじゃないですか」



私は響城さんの腕を引っ張り、ベッドに引き寄せた。



「ほら……私はもう婚約者なんですから好きなようにしていいんですよ?」



そう言って響城さんの唇に私のを合わせ、舌も絡めた。


どんな手を使ってもって言われたんだから、これぐらい平気だよね。


それに使えるものは全て使う。

自分で言うのもおかしいけど、私体には自信あるんだ。

だから響城さん…
私を利用すればいい。

私も響城さんを利用するから。


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