気まぐれ社長の犬
妃和が出て行ってから1週間が過ぎた。
社長の仕事にも慣れて、今日も早めに家に帰った。
「ただいまー」
「おかえり。今日はパーティーがあるんだろ」
「ああ。夜からだけどな」
「多分それ妃和ちゃんも来るよ」
「ふーん……そっか」
「楽しみだろ」
「は!?なわけねーだろ」
「本当素直じゃないなー。でも…自分に素直にならないと二度と手に入れられない物もあるんだからな?妃和ちゃんを欲しがる人なんていっぱいいるんだし」
「…別に俺はあんなやついらねーよ」
俺はそうつぶやいて2階に上がった。
「はぁー…もう手遅れかもしれないのに」
そんな親父の言葉なんて
聞かずに―――
夜になって、家を出た。
会場に入るとつい妃和を探してしまう。
とりあえず主催者に挨拶をして酒を飲んでいると近くにいたやつらが軽く騒ぎだした。
「妃和さんだ…やっぱり綺麗だなそれに今日は一段と華やかだ」
男たちの視線をたどると派手なドレスを着た妃和が立っていた。
久しぶりに見た妃和はやっぱり綺麗で、不覚にも心臓がドキッと動く。
だけど隣にいたのは大嫌いなあいつの親父じゃなかった。
なん…でだよ?
何で咲本があいつの隣で手をとってる?
俺は固まって動けなかった。