気まぐれ社長の犬
咲本モータース本社に着くとすぐ受付に向かった。
「風間グループの風間です。突然ですが副社長に…」
「風間様ですね。連絡いただいております。副社長室にいますのでご案内いたします」
「えっ連絡?」
そんなものした覚えはない。
高槻か……
本当さすがだな。
「こちらです」
受付の女に案内された部屋に入ると、少し前の俺の副社長室のような光景が目に入った。
椅子には咲本が座っていて、ソファーに妃和が座っている。
「妃和!!」
「響城さんどうして!?」
「迎えに来てやった」
「無駄ですよ。妃和さんは渡しません」
そう言って咲本は
妃和の前に立つ。
「邪魔だ…どけ」
「どきません。ほら、見てください」
咲本は妃和と自分の薬指を俺に見せる。
へー指輪ね……
「そんなちっぽけなもんで俺が諦められると思うか?風間グループ社長なめんなよ」
「ちっぽけ?だけどあなたにはできなかったじゃないか!!」
そうだ…確かに俺にはできなかったことだ。
俺はずっと自分に素直になれなかった。
でも俺は好きなやつが不幸になるのを見たくはないし、自分以外のやつのものになるのを黙って見てられる程優しくも我慢強くもねえんだよ!!