気まぐれ社長の犬

この子、テニス部だったんだ……



「ねえ後ろの人誰?」



奏希さんに似た可愛い顔が、私の方を見る。



「あっこの人は響城の婚約者の花月妃和ちゃんだよ」


「えっ響城君婚約者いたの!?」


「ああ最近できた」


「えーっ!!奏女響城君のこと狙ってたのにー」


「お前まだそんなこと言ってるのかよ」



奏希さんは呆れるように奏女さんを見る。



「だって響城君兄ちゃんと違ってかっこいいんだもん」


「はぁ!?兄ちゃんの方が響城よりもてるんだからな!!」



奏希さん、別にそこ競わなくていいと思うんだけど。



「響城さん、好かれてるようですね」


「まあな」



彼女はまたラケットを振り始めた



「最近体なまってるんだよねー。次の試合もうすぐだから動かしておかなきゃ」



そう言う奏女さんに、奏希さんは悲しそうに笑った。


…やっぱり無理なんだ。
もう奏女さんは試合に出れることはないだろう。

よく見れば体は普通より少し痩せていて、筋肉もあまりなかった。

それでも元気そうに見えるのはあの可愛い笑顔のせいだろう。



「俺ちょっとトイレ行ってくる」


「あっ俺も行くよ」



えっ響城さんまで行っちゃうの!?

ちょっと私二人きりになっちゃうじゃない!!

響城さんは私の方を見ずに病室から出ていく。



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