気まぐれ社長の犬

泣いてたんだ……

奏女ちゃんを見ると、同じように悲しそうな目をしていた。


来週、奏女ちゃんがいなくなったらどんな顔をするんだろ?

…まあ私は確実に怒られるかな。



「そろそろ帰るぞ」


「わかりました」


「じゃあ奏女ちゃん、またね」


「うんばいばい」



3人で病室から出て、外に停めてある車の前まで行く。



「お前いつの間に奏女と仲良くなったんだよ」


「さっき響城さんたちが出て行った時ですよ」


「へーそんな短時間に親しくなれるのもすごいけどな」


「響城さん、随分私をなめていらっしゃるようですね。私昔から友達を作るのは得意なんですよ。…まあ、お付きに近い状態になってしまっていましたが」


「フッ想像できるな」


「じゃあ俺はタクシーで帰るよ」


「え?車乗ってけばいいだろ」


「いや、これからまだ少しやることがあるから」


「そうか。じゃあな」


「おう。妃和ちゃんもばいばい」


「はい、さようなら」



私は軽く手を振り車に乗った。



「奏希さん、軽い人かと思いましたけど意外といい人なんですね」


「ああ。あいつはいつもあんなふうにざけてるけどいいやつなんだよ」


「へー…ところで、婚約者というのは?」


「え?ああ…前、婚約者がいたんだよ。まあ無理やり結ばされたものだしもう今は破棄してるけどな」


「そうですか」



そう言って私は響城さんから視線をそらし窓を見つめた。


< 67 / 150 >

この作品をシェア

pagetop