気まぐれ社長の犬
泣いてたんだ……
奏女ちゃんを見ると、同じように悲しそうな目をしていた。
来週、奏女ちゃんがいなくなったらどんな顔をするんだろ?
…まあ私は確実に怒られるかな。
「そろそろ帰るぞ」
「わかりました」
「じゃあ奏女ちゃん、またね」
「うんばいばい」
3人で病室から出て、外に停めてある車の前まで行く。
「お前いつの間に奏女と仲良くなったんだよ」
「さっき響城さんたちが出て行った時ですよ」
「へーそんな短時間に親しくなれるのもすごいけどな」
「響城さん、随分私をなめていらっしゃるようですね。私昔から友達を作るのは得意なんですよ。…まあ、お付きに近い状態になってしまっていましたが」
「フッ想像できるな」
「じゃあ俺はタクシーで帰るよ」
「え?車乗ってけばいいだろ」
「いや、これからまだ少しやることがあるから」
「そうか。じゃあな」
「おう。妃和ちゃんもばいばい」
「はい、さようなら」
私は軽く手を振り車に乗った。
「奏希さん、軽い人かと思いましたけど意外といい人なんですね」
「ああ。あいつはいつもあんなふうにざけてるけどいいやつなんだよ」
「へー…ところで、婚約者というのは?」
「え?ああ…前、婚約者がいたんだよ。まあ無理やり結ばされたものだしもう今は破棄してるけどな」
「そうですか」
そう言って私は響城さんから視線をそらし窓を見つめた。