ワンダフルエラー
「十夜とわたしって…今まで恋愛をはさむ関係じゃ…なかったでしょ?なのに今更恋愛感情とか、十夜にしたらうざいかなァとね…これでも本気で悩んだの」
恥ずかしくて、最後は言い捨てる。
「そうだよ、悩んだんだから!わたし…十夜のずっと傍にいたくて…でもこんな感情も持て余しちゃって…、なのに何その勘違い」
十夜は、どこまでも綺麗な顔に笑みを浮かべてわたしに向き合った。
「そんなの、悩む必要なかったのに」
「…へ?」
「だって、俺もサラ好きだし」
「う…嘘…」
ほんとだよ、と悪びれずに言った。
「…手に入らないならいっそ、なんて。ごめん、ほんと…最低。どうかしてる」
体中の力が抜ける。
「ああ…もう駄目だ…いっぱいいっぱい」
「俺も、」
屋上は寒いのに、わたしも十夜もそこから動こうとはしなかった。
けれど、さっきまでは押さえつけられていた手は、優しく握られている。それがなんだかとても嬉しくて、わたしは思わずぎゅっと握り返した。