ワンダフルエラー

そうなのだ。

中学に入ってから、いつの間にか俺はいわゆる“モテルやつ”になっていた。


別に望んでいるわけでもないのに、知らない女が唐突に気持ちを告げていく。

一変した状況に早々について行けなくなった俺を面白がって、そういう類の指導を一から十まで手解きしてくれたのがサトシだった。


それこそ、手を繋ぐタイミングから始まりキスにセックス、後腐れない別れ方まで。


俺にとってサトシは、友達で親友で先輩でもあった。


「はいはい、そうですね」

「サトシ!」


なのに。

いつも飄々と振舞うサトシの言葉だからこそ、ここのところ出る言葉に棘が見え隠れするのがよく目立った。


なんだか無償に苛々した。

それはサトシにではなく、サトシとの友達としての心地よい関係をぐしゃぐしゃに踏みにじる、沙織先輩やクラスの女子達に対しての。


ただのガキだった俺は、そんな子供染みた気持ちを口にすることも出来ず、不貞腐れて瞼を閉じた。

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