ワンダフルエラー
綺麗にラッピングされたマフィンがこれでもかと机を占領している。
そういえば、今日の5限は調理実習だとクラスメイトが騒いでいたのを思い出した。
綺麗に装飾されたそれをよいしょ、と持ち上げる。
落とさない様に気をつけながら教室の隅にあるゴミ箱へと運んだ。
その時だ。
にゅっと、俺の横から白くて細い腕が伸びてマフィンを一つ掻っ攫った。
「っ!」
まさか、こんな時間に誰かが残っているなんて思っていなかった。
立ち尽くしている俺に、
「これ、いらないんでしょ?」
と、マフィンを捨てようとしていた俺を咎める風もなく首を傾げた。
驚いて首を縦に振ることしか出来ない。
彼女は、「ラッキー」と呟いてさらに俺の腕の中から幾つか見繕って手にとる。
目の前の光景が信じられなくて、俺は固まったまま動けずにいた。
それくらい、俺にとって彼女の行動は衝撃的だったのだ。