ワンダフルエラー

あまみや、さら。

マフィンを持って席に向う天宮さんの背中をぼんやりと見つめる。


入学して二ヶ月以上経つが、この学年に彼女の名前を知らないものはいないと思う。


一言で言ってしまえば、彼女は学年で1番の"優等生"だ。


勉強も運動も卒なくこなし、結果を出す。

入学式では新入生代表として一字一句間違えずに立派な挨拶をしていたし、今はクラス委員として、このクラスをしっかりと纏め上げている。


綺麗な顔をしているとは思うけど、逆に整い過ぎていて冷たいとか取っ付きづらいという印象がとても強い。


俺自身、彼女と言葉を交わしたのなんて今が初めてと言っていい位だ。

天宮さんは、ガタガタと机を二つくっつけている。


「…天宮さん、何して…」


彼女は、ちょいちょいと手招きして俺を呼ぶ。


「食べるでしょ?」


甘いものはそんなに好きじゃないし、どちらかと言えば苦手なのに。

俺はなんとなく断る事も出来なくて天宮さんの向かいに座った。
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