ワンダフルエラー
本当に他愛もない話をしながら、マフィンを口に運んだ。
今日の小テストは難しかった、校長の頭は絶対ヅラだ、トイレに携帯電話を落としてここ数日誰とも連絡がとれなかった、とか。
思い起こせば本当に中身のない話ばかりだ。
けれど、なんだかそれが妙に楽しくて、あんなに大量にあったマフィンをいつの間にか二人で食べ尽くしていた。
「意外…」
「なにが?」
「天宮さんの印象。とっつき辛いかと思ってたんだけど」
あ…と、もの凄い失礼なことを言ってしまったことに気づいて慌てて口を閉じるも、天宮さんはケラケラ笑っただけで、別段気を悪くした風もなかった。
「よかった!それじゃ、生真面目なだけのクラス委員長から格上げされたってこと?」
「いや…えっと…、あぁ、うん…まあいいや」
天宮さんは、口を濁した俺にクスッと笑いながら、さっきはマフィンに伸びたその手を俺に伸ばす。
「サラって呼んで」
「…サラ?じゃあ、俺は…」
「十夜!」
嬉しそうに天宮さんが俺を呼ぶ。
「よろしく、サラ」
その手を握ってそう言った。