ワンダフルエラー
「ジローか…。サラって意外と趣味悪いよな」
結局考えに考え抜いて出した言葉は、ただの軽口で終わるのだ。
サラは「うーん、運命だと思ったのにな」なんて、真剣に言うものだから笑えない。
夕暮れに染まる土手を、ぽつりぽつりと話しながら2人で歩く。まだ冷たい春の風が、さわさわとサラの柔らかそうな髪を揺らしている。
そのときだった。
「うぜぇよな、入江十夜」
不意に聞こえた自分の名前に少し驚いて耳を傾ける。
サラも同様に、声のする土手下を見つめていた。
「あいつ、調子乗りまくってるよ。あちこちに手ぇだして、やりたい放題」
「最近、天宮サンもあいつに御執心みたいだしよ。あの女顔のどこが良いんだ?世の中不公平だぜ」
げらげらと笑う男二人のうち、一人に…見覚えがあった。
「……サトシ」
はっとした様にサラが俺を見た。
そう言えば昔、サラにサトシの話をした事があった気がする。