ワンダフルエラー
わかってはいたけど、俺はそっと口を開いた。
サラは強い視線で俺を見上げる。
「サラがあそこで殴って、何か解決した?」
「…それは!」
「ただサトシ達は被害者になるけど、サラの評価は下がるだけだろ」
思わず声が冷たくなってしまう。サラの瞳は失望の色に染まっていた。
「評価って何。わたし、そんなの気にしたことなんてない!」
「気にしろって言ってんだよ」
「十夜…!」
ばっと手を振り上げるサラの手首を、掌で受け止める。
サラは、プライドが踏みにじられた、という顔をして俺の手を振り解いた。
「十夜のそういうとこ、わたし…大嫌い」
吐き捨てるようにそう言って、サラは駆け出して行ってしまった。
ぱっと振り向いたサラに、驚きで胸が跳ねた。
「明日っから口聞かない!」
呆気にとられて、ただその場で立ち尽くす。
けれど、サラのそういう所がとても好きだとも思う自分に溜息を吐いた。