ワンダフルエラー
ふと視線を上げた先、
ちょうど、目の前の通りを曲がって男女の二人組みがこちらに向って歩いてきた。
「…!」
「あ…っ!」
耳に電話を当てたまま驚いた顔をした女は、なんと今まさに電話が繋がっている沙耶香。
驚きに顔を染め、通話を切ることもせずに通話口に向って、
「ち…違うの、十夜!」
…何が違うんだだろう。
なんて冷静なツッコミをする。
俺は、沙耶香の行動よりもまず、自分のタイミングの悪さに心底呆れた。
知ってた。この曲がりの先にはホテル街しかないってことくらい。
つまりは、そういうことで。
「悪ィ、十夜!」
絶対悪いなんて思っているわけがない。そう、よりにもよって沙耶香の浮気相手はサトシだったのだ。
両手を合わせて謝りながらも、心底楽しそうな顔をするサトシ。
人の女を寝取ったことが、そんなに嬉しいのか。