ワンダフルエラー



「…サラ、大丈夫かな」


シンと静まり返った教室に、自分の声が響いた。

とりあえず、サラの文字を真似て、書き途中の日誌を埋め、職員室へと持っていく。幸い担任はいなかったので、デスクに置いて校舎をあとにした。


少しずつ灯りはじめた外灯に、夜道が橙色に染められている。

もうすぐ冬だなぁ、なんて感慨に耽ってみたときだった。


ポケットに入れていた携帯が、鈍く振動する。慌てて手に取れば、それはサラからの着信だった。


「もしもし、サラ!?」

『…っ』

「…おい、サラ、どうした?」


泣いているのか、声が小さく震えているのに、思わずぎゅっと携帯を握り締める。さっきの様子であれば、隆志が何か酷いことでも言ったのか。

< 144 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop