ワンダフルエラー
着信はサラのものだった。
「ごめん、わたしだ。………もしもし、ああ、なんだ英二かあ」
英二、という名前に自然と拒否反応。
何を話しているのかは分からないけど、なにやら仕事のことで英二がミスをしたらしいことが、サラの言葉から分かる。
「…はあああ!?それ、あんたが持ってたの?」
怒鳴り声に、思わず俺の肩が跳ねた。サラは苛々した様子で英二と話している。
「今から行く」
一際大きな声でそう言って、勢いよくサラは通話を切った。
「今の、英二?」
「そう。あの野郎、仕事持ちっぱなしにしてたのよ。信じられない。今から取りに行くわ」
ゆっくりと給水塔から立ち上がって、制服についた汚れを払うサラ。
「十夜も、もう帰るでしょ?」
帰りたかったけど、そういえばまだ企画書が纏め切れていなかったのを思い出して、首を横に振った。
「そうか。うん、わかった。じゃあまた明日ね」
サラは俺を見下ろしながら、そう言って笑った。