ワンダフルエラー


「…んー」


そっと腰をかがめて、そのまま俺の顔を唸りながらサラが見つめるくる。


「な、なんだよ…怖いって、サラ」


俺の言葉なんて無視するように、サラはただ俺をじっと見ている。

そして、


「いただき!」

「は?」


近い距離にいたサラは、俺の肩に手を回して、さらに距離をつめて、

……、


「おい!」


ぺろりと舌を出して、俺から離れた。唇に触れたモノ。そうだ、今のは、もしかしなくても…キス。

勢いよく突っ込んだ俺に、サラは悪びれもせず、


「や、ごめんごめん。あんまり綺麗だから、ここでチュー位しとかなきゃ勿体無いかなあ、なんて」


とかなんとか言いやがった!


「…おまえって、昔からそういうやつだよな」


呆れた様に言う俺にサラはニッと笑うと、今度こそ給水塔から飛び降りて、綺麗に着地をした。


「でも、こんなわたしと一緒にいてくれる十夜に、いつも感謝してる。それじゃあ、また明日ね」


そう言って軽い足取りで去っていくサラの背中を見て、思わず深い溜息が零れた。
< 163 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop