ワンダフルエラー



どういう気持ちで、青山さんはそんな言葉を言ったのだろう。

ふと、俺はそのときのことを思い出しては、考える。自分を見て貰えないなんて、そんな寂しいことはないのに。


「…、」

「行こ」


青山さんが微笑んで俺の手を引く。

場所はどこだっただろう。周辺のラブホテル、俺の家、青山さんの家だったか。


偏頭痛で、朦朧とした頭は、そのときのことをあまり鮮明に思い出せない。

ただ、絡み合うようにベッドに倒れこんで、乱暴に、何度も、何度も、キスをした。


「…十、夜君…っ!」


最低だ。

俺は、何度も俺の名前を呼ぶ青山さんの下の名前すら思い出せず、一回も呼んでやることが出来なかった。


サラの代わりなんて、無理だ。

朦朧とした頭でも、そんなことくらい理解出来たのに。

俺の下で喘いでるのは、サラなんかじゃない。


キスをした時に感じた唇の痛みだけが、その時感じた唯一のリアルだった。

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