ワンダフルエラー
放課後――
俺は、昨夜の雨で出来た水溜りを飛び越えながら、通い慣れたサラの家まで歩いていた。
小さなアパートの2階の窓部屋。
インターホンを2回鳴らした。
「真帆?忘れ物でもしたの?鍵開いてるよ」
少し枯れたようなサラの声が、中から聞こえる。
というか、鍵を開けっぱなしにするなんて、無用心すぎだろ。
「なに、真帆も来てたんだ。入れ違い?ていうかサラ、鍵くらい閉めろよ、無用心すぎ」
熱で、顔を赤くしたサラが驚いた様にこっちを見つめている。
最近感じていた後ろめたさを隠すように、俺はテーブルに置いてあった桃を頬張った。
苦しそうに咳をするサラの隣に腰掛ける。
「…大丈夫?珍しいな、サラが風邪ひくなんて」
「…わたしもビックリよ」
俺は調子に乗って、中学のころの思い出話なんかをして、なんとかいつも通りを必死に装った。
サラも気づいてないようで、ホッとする。