ワンダフルエラー

ここ数日、自分への疑問で頭が一杯で、こうしてサラと向き合うことがなかった。

まるで靄でもかかったように思考は鈍るし、偏頭痛は頻繁に起こるし、とにかく憂鬱で。

急に笑うのをやめた俺に、サラはきょとんとした顔で見上げる。


熱、あんのかな。

そっとサラの額に手を当てた。


サラの真っ黒い髪は、見た目より随分細くて柔らかいんだ、なんて今頃知る。


「なー…サラ?」


閉じられていた薄い瞼がゆっくりと開いて、黒い瞳が俺を捉える。嬉しくて、つい口角が上がってしまう。


「チューしていい?」

「…げほっ、ごほっ」


「大丈夫か?」


激しくむせるサラの背中をさすりながら聞くと、サラはもの凄い目つきで俺を睨んだ。


「折角お見舞いに来てもらってこんなこと言うのもあれだけど………殴るよ?」


そう言って、拳を俺につき出すサラは、きっと何かしたら本当に殴るつもりなんだろう。


「なんでだよ、サラだって俺の唇奪ったじゃん」

「気色悪い言い方すんな!」


あの夜のお陰で不眠になるくらいに悩んでいるっていうのに。
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