ワンダフルエラー

「うん、だってあれは十夜が凄く綺麗だったんだもん。チューくらいしとかないと勿体無いかと思って」


にへら、と変な笑い方をするサラを見て、俺は呆れて眉を寄せる。


「じゃあ、俺も一緒。今のサラ、すごい色っぽいもん」


そう言えば、サラは赤い顔を更に赤くして、俺のことをポカっと叩く。


「ばーか。病人に色気感じてどうすんのよ、そんなにチューしたいんだったら…」


何かを言いかけて口を噤むサラに首を傾げる。

サラはコホンコホンと、何かを誤魔化すかのように咳をした後に、玄関のドアを指差す。


「…十夜、もう帰りな」

「いやだ」

「風邪うつっちゃうよ、帰りなって」

「いーやーだー」


「駄々っ子か!」とサラはビシリと俺の方に裏手を入れながら突っ込んで、ゴホゴホと盛大にむせた。

こういう意味分からないところ、結構好きだ。


項垂れるサラを、俺は下から覗きこんだ。

< 174 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop