ワンダフルエラー
歩幅の広い隆志君は、歩くのが早い。
わたしはいつだって彼に追いつくように、必死になって足を動かすので、こないだヒールのある靴を履いたときにはついに躓いて膝に傷を作ってしまった。
「ま、待って、…待ってよ、ねえ!」
繋がれた手を思い切り引っ張って、ようやく彼の歩みを止める。だって、おかしい。あんなにわたしを急かして帰る準備をさせたのに(…おまけに、日誌を提出することも出来ず)
隆志君とわたしは、どんどんと昇降口から離れていた。
移動教室でしか使わない、別棟の校舎。
既に人の気配はなくて、ひっそりとした冷たい静寂だけがあった。
隆志君はきょろきょろと周囲を確認した後に、空き教室にあたしを連れ込んで、かちりと鍵を掛け、そしてカーテンを引く。
なんだか、嫌な予感がした。