ワンダフルエラー
「…サラ!!!」
濃い橙色に染められた公園のベンチで、ぼんやりと空を見上げていた。慌てた様子で走ってきた十夜に向かって、ゆっくりと手を振る。
「ごめんね、急に電話なんかしちゃって」
「な、サラ…おまえ、大丈夫なのか?」
11月だというのに、じわりと汗を滲ませた十夜が、息も絶え絶えに聞く。わたしは、頷いて、コブシを前に突き出した。
掌は皮が向けて、内出血で気持ち悪い色になっている。
「ぶん殴りました」
「えっ」
「手が、めっちゃ痛いです」
じわりと視界が滲む。
泣いてなんかやるもんかと、ぎゅっと唇を噛み締めたのに、ぽんぽんと肩を叩く十夜は優しくて、なんともあっけなく涙が頬を滑り落ちた。