ワンダフルエラー
「サラさぁ…」
もくもくと手を動かして、5分。真帆が、視線を書類に落としたままわたしの名前を呼ぶ。
「隆志と別れたってほんとう?」
「ぎゃあ、その名前出さないで!鳥肌立つから!!」
「…なんのトラウマよ、それ」
フリーの身となった今、部活に入っていないわたしと十夜の居る場所はこの堕落した生徒会室しかなく、暇があればここで入り浸るというなんとも地に堕ちた日々が続いていた。
真帆はおかしそうにクスクスと笑ったあと、その羨ましいくらいの細くて長い足を悠然と組み替えた。思わず見惚れる。
「十夜でいいじゃない」
「はあ?何言ってんの、それ!ありえないから」
あはは、と笑い飛ばせば、真帆はなんとも渋い顔をして「あんたも十夜もガキねえ」と呟いた。
まったく酷い言い草だ。