ワンダフルエラー
もじもじと顔を赤らめながら、一生懸命に言葉を紡いでいる。さすがにここからじゃ距離がありすぎて何を言っているのか聞き取ることは出来ない。
「十夜って、顔がイイからねえ」
わたしは、黙ってその現場を見つめている真帆に言った。
「それに、可愛い子好きだし、きっとカップルも成立でしょ。くっそう、また十夜に先越されたよ」
いこう、そう言って真帆の手をとった。
どうせこの場で見届けなくたって、明日になれば嬉々とした様子の十夜にたっぷりと自慢されるのだから。
「…真帆?」
押し黙ったままの真帆を呼ぶ。
「いいの、サラは」
「いいって、何が」
「何も、思うところはないの?今の見て」
「…ええ。まあ、明日延々と自慢されるかと思うと少し憂鬱だけど」
けれど、十夜がハッピーなら些細な問題だ。そう言えば、切れ長の目がどこか不服そうにあたしを見た。