ワンダフルエラー
「ちょっと、にいさん」
生徒会特権の牛革のソファに座って、足をブラブラとさせながら珍しく書類と睨めっこしている十夜に声を掛けた。
なんだよ、とこちらを見もせずに声だけが返ってくる。
「なんかわたしに自慢する事とかないわけ」
「…なんだよ急に」
ようやくその顔をこちらへと向けた。どこまでもとぼける気らしい。熱でもあるのか。
「例えば、ミス誠東の女子に告られちゃいました!とかさ」
「…さてはサラ、覗いてたろ」
「ちょっと。人聞きの悪いこと言わないでよ。たまたまよ、たまたま」
にやりと笑ってそう言えば、十夜は小さく溜息をついて飴色の髪をカシカシとかいた。
「また、十夜に先越された」
「…越されてねーよ」
どこか憮然とした様子で言う十夜が、わたしには凄く意外だった。いったいどうしたっていうのだろう。