ワンダフルエラー
スラリとした背は、遠くからでも綺麗に目立つ。
「真帆ー」
その背に呼びかければ、彼女はゆっくりと振り返った。
書類の束を抱えていて、なんとも不安定。
「サラ。今日も生徒会室に行くつもり?」
呆れたように真帆がそう言うので、わたしは口を尖らして、そうそう暇じゃないんだと反論した。
他愛もない話をしながら廊下を歩く。
「そんな束抱えて、どうしたの?」
聞けば、社会学科の担任に任されたと言う。
しっかりものの真帆は、この学校の先生の人望もべらぼうに厚い。それ故、余計な雑用を頼まれてしまうことも多かった(因みに、わたしや十夜はうまく逃げている)
「真帆は器用貧乏なんだから」
「うるさいわねぇ、ほっといて」
つん、と顎をあげる真帆。
「ねえ、久しぶりにカラオケとかどう?ここしばらく行ってないじゃん」
「いいわね!…と、言いたいところなんだけど、まだ企画書纏めきれてないのよ」
残念そうに言う。しっかり者の真帆がそんなに一杯一杯になってしまった原因を、わたしは知っている。
―英二め…、今度フリー7時間カラオケで拘束するうえに全額奢らせてやる…。
「来週までには落ち着くよ」
「やった、じゃあ来週あたり行こう」
廊下の角を曲がろうとした、その時だった。