ワンダフルエラー
「十夜と何かあった?」
とおや、という名前に青山さんはピクリと反応する。
「青山さん、何か勘違いしてるよ。十夜とは中学からの付き合いで、生徒会も一緒だから仲良いだけで…そういう関係じゃ…」
「嘘!」
ぴしゃりとわたしの言葉を切る。嘘…て、わたしがここで嘘をついてなんのメリットがあるっていうの。
頑なに首を横に振る青山さんに思わず溜息が出そうになるのを、ぐっと我慢。
「…嘘じゃないって」
どうしたら信じてくれるんだろう。
勘違いで他人の頬を殴るなんて理解出来ない。したくもない。
やられっぱなしも面白くない、湧き立つ苛立ちの中からそんな想いが生まれる。
「…それに、万が一付き合っていたとしても、それって青山さんには関係ないんじゃないの?」
まあ、本当に嘘偽りなく、付き合ってなんてないんだけど。そんな、青山さんにとっては少し意地悪なことを言ってしまう大人気ない自分。
愛らしい顔立ちで、よくそこまで人を憎んだ顔を出来るなと感心した。
それくらい、今の彼女の顔は凄まじい。
あの場では収集が着かないと思って生徒会室に招いたけれど、なんだか面倒くさいことになってしまった。
ちらりと横を見れば、真帆もうんざりした様子で片手間に携帯をいじっていた。