ワンダフルエラー
「…振られたんでしょ?」



確認しづらいけれど、しない訳にはいかないのでおずおずと言葉を紡ぐ。


「そう……」


俯いて、哀しそうな表情をする。青山さんが、本気であの十夜を好きなのだということが伝わる。


本気だからこそ、気持ちが暴走してしまったんだろう。

女の心理って不思議。浮気した男よりもその浮気相手の女に殺意が湧くって、昔何かの番組でやっていた気がする。


「なのに関係を持ってしまった訳?」


真帆が食いついた。先程までの無関心ぶりはどうしたの?真帆さん。青山さんの身体は、真帆の問で小さく震えた。


「…わたし…諦め切れなくて…」


もう一度、駄目なのは分かっていたけど、もう一度だけ告白をしに行ったと青山さんは言う。

信じられなかった。


十夜は、確かにモテるし、彼女もよく変わっていたけど。それはオンナ遊びをしていた訳じゃない。

わたしと一緒で、いつも相手は"ちゃんと"好きになった子だったはずだ。


「抱いてくれた。それっきりにしようと思ったのに…やっぱり悔しくて…」

「……っ」


慰めで人を抱けるようなヤツじゃない。そんないい加減な男なんかじゃない、はず。

ごめんなさい、青山さんは言った。どうやらようやくわたしに対しての誤解を解いてくれたようだった。

静かに生徒会室から出て行く辛そうな青山さんの背を見送る。
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