ワンダフルエラー
「あ、雨」
帰る頃には、頬の痛みも大分引いていた。
昼間までは、青空が広がっていたはずなのに、空は厚い雲で覆われている。ぽつりぽつりと雨が降り始めていた。
「最悪、傘持ってない」
「ちゃんと天気予報見なさいよ。午後から70パーセントって言っていたのに」
鞄から折り畳み傘を取り出して広げている。
真帆は、あの後ずっと一緒にいてくれた。仕事をすると言っていたのに、黙ってわたしの話を聞いてくれる。
そんな優しい彼女に、わたしはいつも頼りっぱなしだ。
「仕方ない、サラの家まで送っていってあげる」
そう言って真帆はわたしをその小さな傘に入れようと傾けた。
「ありがと、でも大丈夫。まだ降り始めだし、走って帰るよ」
笑って言えば、どこか心配そうな顔をしてわたしを見つめる。
わたしと真帆の家は正反対に位置する。これ以上真帆に甘えるのも申し訳ないので丁寧に断った。
「気を付けてね」
真帆は仕方無さそうにそう言ったので、うんまた明日、と返した。