ワンダフルエラー
「サラ、中学の修学旅行直前にも熱出したよな」
その時のことを思い出して、おかしそうにくつくつ笑う十夜。
くそぅ。もしわたしが今万全の体調だったらすかさず蹴り飛ばしてやれるのに。
「……よく覚えてるね」
「そりゃあ、あんだけワンワン泣かれたら」
十夜は、いつもの十夜だった。
それにホッとする。このまま気づかなかった振りをしてしまおうと思った。
青山さんに頬を叩かれたことも、わたしが全部黙ったままでいれば何もかも大丈夫。
すっと笑うのを止めた十夜。
綺麗な顔がわたしを見つめている。
そしてその骨張った手はわたしの額に当てられた(…ちょっと、わたし、何ドキドキしてんの、十夜なんかに!)
優しく額を撫でる手はくすぐったくて、気持ちがいい。
「なー…サラ?」
なに?とわたしは薄く閉じていた瞼をゆっくりと開きながら聞き返した。
目の前には、ニッコリ笑った十夜の顔。