ワンダフルエラー

「ばーか。病人に色気感じてどうすんのよ、そんなにチューしたいんだったら…」


と、言いかけてわたしは思わず口を噤んだ。(青山さんに頼みなさいよ)危うく言ってしまうところだった。

十夜は、それについて気づいてはいない様で思わず胸を撫で下ろした。


「…十夜、もう帰りな」

「いやだ」

「風邪うつっちゃうよ、帰りなって」

「いーやーだー」


駄々っ子か!と思わず突っ込みを入れてしまい、ゴホゴホと盛大にむせる。

はあ、疲れる。

項垂れるわたしを覗きこむ十夜。


「ごめん、病人疲れさせてる?」

「……わかってるなら、っゴホ、ゲホッ…っ、」


痰の絡んだような重い咳が体の底から次々と押し寄せる。苦しくて、思わず固く体を丸めた。


「サラ、身体起こしな」

「…、」


十夜はわたしの肩を掴んで、ゆっくりと起き上がるのを手助けしてくれる。
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