ワンダフルエラー
英二の低い声が、二人しかいない生徒会室に、じわりと響く。
「そんだけ、十夜が特別なんだろ」
すっと、言葉が胸に沁みた。
うん、そう、それは多分出会った時からずっとそうだった。
何があっても、最後に戻る場所は十夜の隣だった。わたしも、十夜にそんな居場所を作ってあげられていたのだろうか。
「おまえ、逃げてるだけだ」
「…そうかも」
一緒にいるのが当たり前すぎて、なかなか気づくことが出来なかった。否、気づこうとしなかった。
「英二のくせに、良いこと言うじゃん」
「うるせえよ」
きっかけは、ほんの些細なことだったけど、十夜が誰より大切だと自覚するには充分すぎるほど。
「英二、この後暇?」
「あぁ?別に用はないけど…」
「夕飯奢る」
英二はもの凄く嬉しそうな顔をして、わたしを見た。
うん、そうだ。
もう、恋のエラーを怖がるのはいい加減にやめよう。
今が向き合う時なのだ。