ワンダフルエラー






「早く告れよ」

「…うん…なかなか、勇気でなくて」


英二も本当によく付き合ってくれると思う。

放課後、生徒会の仕事を終えた後、屋上で英二と話をしていたら、あっという間に夜の9時を過ぎていた。

何を話しても、考えても、結局はわたしが一歩を踏み出さない限りは、この状態は何も変わらないという結論になる。


そういえば、前はここで十夜と一緒に星を眺めたっけ。


なんだか、遠い昔のことみたいだ。

月明かりに照らされた十夜があまりにも綺麗で、キスをした。

今じゃ絶対そんなこと出来ない。


「俺…そろそろ行くわ」

「うん、ありがとう、英二」


ゆっくりと立ち上がる。そんな彼に、わたしはもう少しここで考えていくと伝えた。


「ごめんね、付き合ってもらって」

「別に。暇つぶしだ」


ケッ、と吐き捨てる様にそう言った。

暇つぶしでもなんでも、こうして付き合ってくれることは本当に嬉しかった。


去っていく英二の後ろ姿に、「ありがとう」ともう一度お礼を言った。


空を見上げる。

今日は、雲に覆われて月も星も見えない。

月明かりの無い夜は、酷く暗かった。
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